沖縄ではお祝いの席では始めに「かぎやで風(かじゃでぃふう)」が踊られます。
そこには琉球に数多くいたと信じられていたマジムン(妖怪)の存在が関係していた・・・のかもしれない。
かじゃでぃ風にはそんな伝承が残っていました。
かじゃでぃ風の歌詞
と、大きな喜びを蕾が花開いた事に例えて美しく表現した歌詞になっていて、おめでたい席にはピッタリ。
そんなかじゃでぃ風がどのようにマジムンと関わっているのか。
かじゃでぃ風にまつわる伝承
昔、夜になるとシチマジムンが琉球の王様の命を奪おうと襲いにきました。
※シチマジムンとは最強と言われていたマジムンだが、その姿は黒いモヤのようにはっきりしなかった。
いくらお坊さんを読んでお経をあげても追い払うことができなかったそうで、今度こそ王様は命を取られて死んでしまうのではないかと皆は心配しました。
ある日、首里の坂下の道で3人の三線上手な人たちが辻遊郭に行く途中「歌を3節ほど唄えばシチマジムンを追い払う事ができるのに、王様は何をそんなに心配しているのか」と話していたそうです。
それを聞いた首里城の門番は、早速その事を王様に申し上げると、王様はすぐにこの3人をお城へ迎え入れました。
3人がシチマジムンを退治する為にご馳走を用意して待っていると、急に当たりが煙に覆われ真っ暗になりました。
3人はすぐに三線を取り「百八ぬ玉ぬ ちりてぃぬくびけーじ いかなシチやてぃん どぅちぃどぅさびる」と、この歌を3回歌うとすぐに辺りは明るくなり、シチマジムンを追い払うことができました。
“歌ほど魔除けの力があるものはない“それから沖縄ではお祝いはいつもかじゃでぃ風から始まるようになったそうです。
かじゃでぃ風と披露宴
このように琉球王国時代、歌には神聖な力があると信じられており、お祝いの席では始めにかじゃでぃ風でその場を清めていたとされています。
神事の前にも巫女が鈴などを手に神楽を舞うのは、その場を清浄して神を天上から降臨させるという意味があります。
他にも、琉球舞踊を習っていた知り合いが、稽古の始まりはかじゃでぃ風を踊ってからスタートしたらしく、最初に覚える踊りもかじゃでぃ風だった、と。
これは流派によって違うと思いますが、それだけ大事な踊りって事なんでしょう。
さて、その場を清めるこの舞。今の沖縄の人でも普通に見ることができます。
それが、披露宴です。
沖縄の披露宴では、幕開けでかじゃでぃ風を踊ってからプログラムが進んでいきます。
これはそういう昔からの風習が今に受け継がれたって事なのか、誰かがフォーマットを作る上で組み込んだ商業的なやつなのか(笑)
でも確か沖縄では結婚の事を「ニービチ」って言って「根引き」から来てるらしく(諸説あるが)
「これは求婚をされた女の人が嫌すぎて木の根っこにしがみついて離れなかったのを引き剥がした」が由来らしく(諸説ある)、それだとおめでたくない感じがするから、披露宴では元々踊られてなかったんじゃないかなと思ってしまう(笑)
まとめ
かじゃでぃ風がおめでたい席で踊られるようになった理由と、その歌の意味が素敵ってことはわかりました。
そういえばうちの音楽事務所出身のマネージャーが後輩の芸人を褒める時に
「彼の大きな蕾がいつ花開くのか楽しみ」って表現を使ってたことがあり、その時「何てステキな表現をするんだ」と思った記憶がありますが、今考えるとこれはかじゃでぃ風からの引用だったのかなぁ。
そうじゃなければ、このマネージャーはシチマジムンを退治したと言われてる辻遊郭に行こうとしてた人の末裔なのかもしれない。
この伝承“辻遊郭に行こうとしてた“って話、抜いても良くない!?