沖縄の伝統エイサー

沖縄の伝統エイサーと言えば、精霊送りを目的とした念仏歌に合わせて踊る念仏踊り、つまり本土で言うところの「盆踊り」です。
それが、創作エイサー団体の登場により、この「盆踊り」という枠を超え「エイサーパフォーマンス」として、今や世界中に広まっています。
元々このエイサー、「袋中上人(たいちゅうしょうにん)という浄土宗の僧が尚寧王の時代に初めて琉球に伝えた」と、一般的には言われており、仏典を民衆にも分かりやすく琉球の言葉に直して伝えたのが念仏の始まりと言われています。
ただ、研究者によってはこの説が疑われてて、尚寧王(1589年〜1620年)どころか尚秦久王(1454年〜1460年)の時代にはすでに念仏踊りが催されていた可能性もあると指摘されています。
なので、今後エイサー=袋中上人説が覆る時が来るかもしれないし、来ないかもしれないし。
その辺は専門家に任せるとしましょう(笑)


エイサー

エイサーという名称

この念仏踊りが「エイサー」という名称になったのには諸説言われていますが、エイサーの中心をなす念仏歌である「仲順(ちゅんじゅん)流り」のはやし詞“エイサー エイサー ヒヤルガエイサー“からとったとされる説が一般的です。ただこれも“一般的“なので、もしかするとこの説も今後変わるかもしれないし、変わらないかもしれないし(笑)

さて、何度も言うようにこのエイサーは“念仏踊り“なんです。
それが今では、お盆とか関係なく観光施設や運動会、披露宴とか色んなところで見ることができるようになりました。
そんなエイサーが特に力を発揮するのが、披露宴。
酒の入った親族のおじさんがエイサーの音に合わせてカチャーシーを狂喜乱舞します。
ただ、エイサー本来の意味から考えると、披露宴という新たな門出を迎える新郎新婦がエイサーという念仏踊りで送られるっていうのは縁起でもなさそうだが(笑)

でもエイサーの持つ意味合いも少しづつ変わってきてるし、根本は残しつつ、変化ができたからこそ今でも沖縄の文化として残ることができたんじゃないかなと個人的には思います。

エイサーの種類

一言でエイサーと言っても、地域によって踊りのスタイルは様々です。

  1. 太鼓エイサー
    多分エイサーって聞いたらこれを想像する人が多いと思います。僕もこれです。
    主に男性が大太鼓と締め太鼓を、女性が手踊りをするタイプ。(男性が手踊りをすることもある)
    創作エイサーもこのタイプが多いです。
  2. パーランクーエイサー
    うるま市の勝連あたりのエイサー。
    パーランクーが中心の踊りで、男女の手踊りがその後に続きます。また、沢山のチョンダラーが踊ったり指笛でその場を盛り上げるなど重要な役割を果たす。
    白衣の上に黒衣をつけた衣装が古い念仏踊りをイメージさせます。
  3. 手踊りエイサー
    本島北部、本部辺りで見られる踊りで、男女入り混じって手踊りをするエイサー。

他にも種類があると思うんですけど、僕が見たことあるものでいうとこんな感じです。
(櫓をくんでその周りを手踊り衆が踊る円陣エイサーというのもあるそうなんですが、僕は未確認なので詳しくは割愛します)

色んな地域にそれぞれのエイサーがありますが、場所によっては他所の地域にエイサーを指南してもらったり、他所でエイサーをやってた人がエイサーの無い地域で立ち上げたりと、本当に色んなパターンで伝わったりしてるので、この分類を頭の隅に置きながらみると、「もしかしたらここはどこどこの流れが組まれてるかも」なんて見方ができます。

それともうひとつ。
僕は沖縄本島中部、宜野湾の出身なのでエイサーには比較的触れて育った方なんですが、エイサーというとヤンキーという種類の人がやってるってイメージはありました。
これはきっと僕の世代(30代)ぐらいはあると思います。
もっと言うと、青年会=ヤンキー。みたいな。
ただ、ここで注意して欲しいのは、「青年会=エイサー」ではないってことです。
青年会っていうのは地域の人を年齢によって分けた区分のひとつで、その集団(青年会)が地域の為にしている活動(清掃活動など)のひとつとしてエイサーがあるんです。
※全島エイサー祭りの出場条件のひとつに“地域のボランティア活動“という項目があるそうです。当時の僕の地元の青年会長が言ってました。(今はわかりませんが)
今となっては、これはエイサーだけがひとり歩きをしている青年会に対して、本来あるべき青年会の姿を取り戻させる為にはいいのかもなぁなんて思ったり。
ちなみに青年会の他には、子供会・婦人会・老人会などがありそれぞれ役割があります。

それと、普通エイサーは自分の地元の青年会メンバーの一員としてエイサーを踊るというのが一般的だったんですけど、今は違う青年会(地元じゃない地域)でエイサーをやるっていう人も増えています。

エイサーやりたいけど、ヤンチャな人が多くて青年会に入りにくい・・。そんな人がいたのも事実だし、ヤンキーがやってるからエイサーちょっと・・。なんて毛嫌いする人がいるのも事実。
そんな声を受けて広まっていったのが創作エイサー団体なのかもしれない。

そして、青年会にヤンチャな人が多い理由もわかりました(笑)

エイサーはヤンキーの素行矯正だった!?

古くは琉球王国時代から続くエイサー。
しかし、途中で途絶えた地域や他所の踊りを取り入れて復活した地域など、伝承は様々です。
そんな色んな地域でのエイサーの役割のひとつに「若者の素行矯正」があったそうです。
場所によっては、夜な夜な悪行を繰り返す若者たちの有り余るパワーをエイサーにぶつけて落ち着かせる為に踊らせたり、お酒を飲んで村を徘徊する若者にエイサーを踊らせる為、文化が無かったのにわざわざ他所からエイサーを習ってエイサーを立ち上げたり。なんて話が1つや2つじゃないのが面白い。

すしざんまいの社長がソマリアの海賊に「海賊するよりマグロとった方が金になるぞ!」って言って海賊を壊滅させたみたいなことだ(笑)

まぁ実際はどうかわかりませんが、この話が全くのデタラメじゃなければ、エイサーを踊ってる人にヤンチャな人が多い説はあながち間違いじゃないのかも。

そうなると、金髪という異文化を取り入れながらも、沖縄の古き伝統を守るヤンチャな人達は沖縄に必要な人材なんです。(笑)

まとめ

念仏踊りから始まり、今や沖縄の伝統文化として日々進化を続けるエイサー。
それは今なお受け継がれてきた形を残す、地域の青年会という存在と、世界中にエイサーの知名度を広めた創作エイサー団体のどちらが欠けてもなし得なかったんじゃないでしょうか。

確か新型コロナの影響で中止になってしまいましたが、「2020年の1万人のエイサー踊り隊」というイベントのテーマが“伝統VS創作“だったかと。
こういうバックボーンを知ると、色んなエイサーが一堂に会するあのイベントがより楽しめるますね。

かいたひと
ゴリラ勇介

沖縄で「ゴリラコーポレーション」というコンビで芸人をやっています。
普段は漫才やコント、新聞での執筆活動、ラジオで喋るのも聴くのも好きで、ラジオ沖縄では「people wave α」という番組もやりつつ、タイムテーブルでラジオコンシェルジュを執筆しています。RBCiラジオでも「只今いきものんちゅ」という番組をやっています。

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